一般には、2600 Magazine、または単に2600と呼ばれる。

概要

2600は、電話交換システム、インターネットプロトコル、通信技術、コンピュータ、セキュリティ、高度技術をめぐる政治や社会への影響を扱うアメリカの雑誌である。

1984年に刊行を開始し、後に季刊誌となった。紙版・デジタル版、バックナンバー、年次のHacker Digest等を通じて刊行と保存が続いている。

単なる技術雑誌ではない。

  • 読者から寄せられた記事
  • 電話・コンピュータシステムの観察
  • セキュリティやプライバシーをめぐる論考
  • 企業・政府・法制度への批判
  • 手紙、ニュース、文化的記録
  • ハッカー共同体の自己記述

が同じ冊子の中に並ぶ。

「2600」という名前

名称の2600は、かつて一部の長距離電話網で使われた2600Hzの信号音に由来する。

電話網の制御信号と利用者側の音声経路が十分に分離されていなかった時代、2600Hzの音を利用したphone phreakingが象徴的な技術となった。

したがって2600という数字は、単なる雑誌名ではなく、次のものを圧縮した記号でもある。

  • 電話網
  • 音による制御
  • Blue box文化
  • Phone phreaks
  • 利用者と通信事業者の境界
  • 巨大システムを外側から理解する態度

創刊時の位置

2600のVolume 1は1984年に刊行された。

初年度の記事一覧には、電話交換、長距離通信、MCI、ARPANET、電子メール、プライバシー、British Phreaking、trashing、電話会社、コンピュータ犯罪をめぐる話題が並ぶ。

この並びからも、当初から「コンピュータだけの雑誌」ではなく、電話網とデータ通信が連続していた時代の雑誌だったことが分かる。

物としての2600

2600は、内容だけでなく、物質的な佇まいそのものが標本になる。

  • 小型のdigest判
  • 大手商業誌とは異なる表紙
  • 細かな文字で詰められた誌面
  • 読者投稿中心の構造
  • 海外から届く紙の冊子
  • バックナンバーを保存し、後から参照する文化

公式側も、バックナンバーは一度読んで捨てるものではなく、保存して必要な時に参照される資料だという認識を早くから示していた。

それは雑誌であると同時に、定期的に届く小さな技術文書集だった。

なぜ面白いか

地下文化が定期刊行物になった

Usenet、BBS、textfile、口伝、電話実験などに散在していた文化が、住所を持つ編集部と、定期刊行物の形を得た。

地下的でありながら、完全な匿名の断片ではない。編集され、印刷され、購読され、保存される媒体になった。

電話とコンピュータが分離されていない

現在は「通信」「サイバーセキュリティ」「政治」「デジタル権利」が別分野のように扱われるが、2600ではそれらが同じシステムの異なる面として並ぶ。

この視点は、phreakingからhackingへ連続する文化を理解するうえで重要である。

読者が共同体の記録者になる

専門家が読者へ一方的に解説するだけではない。読者が観察し、試し、考え、記事や手紙を送り、次号の内容を作る。

雑誌自体が、共同体のcommunication busであり、archiveでもあった。

私の記憶

私にとって2600 Magazineは、実際に読み続けていた雑誌というより、当時、海外に存在する憧れの物体だった。

  • 2600 Magazineの存在を知っていた
  • 懐かしいという感覚がある
  • 海外から購入したいと思っていた
  • 当時は購入できなかった

なぜ購入できなかったのかは、いまのところ自分でもはっきり思い出せない。

手に入らなかった物の情緒

2600を欲しかったが買えなかった、という記憶は欠落ではなく、この標本の中心的な情緒になり得る。

インターネット上では断片的に文書へ触れられる。しかし、本物の冊子は海の向こうにあり、購読方法、支払い、住所、言語、物流の壁があった。

情報には触れられるのに、物には触れられない。

この距離が、2600を単なる雑誌以上のものにした。

まだ見ていない誌面、届かなかった封筒、所有できなかったバックナンバーまで含めて、当時の海外ハッカー文化への入口だった。

TEXTFILES.COMとの接続

2600とTEXTFILES.COMは同じものではない。

しかし、この蒐集棚にとっては次の対照が面白い。

2600 Magazine
        = 編集され、定期的に刊行される紙の共同体記録
        
        TEXTFILES.COM
        = 各所に散らばったデジタル断片を保存する巨大アーカイブ

一方は定期刊行物として地下文化をまとめ、もう一方は複製と散逸を経た文書を後から救い上げる。

両方とも、消えやすいハッカー文化を時間の外へ持ち出す装置である。

この標本が示す境界

  • 地下文化と出版物
  • 匿名的共同体と編集責任
  • 危険な情報と報道・研究
  • 技術情報と政治的言論
  • デジタル情報と紙の物質
  • 海外文化への接続と購入・物流の壁
  • 読者と執筆者

関連標本

  • 2600Hz
  • Blue box
  • Captain Crunch
  • Phone phreak
  • Emmanuel Goldstein
  • HOPE Conference
  • Off the Hook
  • Hacker Digest
  • 海外雑誌通販
  • digest判
  • Phrack
  • Usenet / alt.2600
  • TEXTFILES.COM
  • 手に入らなかった物

資料・出典