電話の裏技を、政治の言葉で配った

YIPL――Youth International Party Lineは、1971年に始まった地下ニュースレターである。

Abbie Hoffmanと、電話愛好家を名乗るAl Bellが関わり、Yippieのカウンターカルチャーとphone phreakingの技術情報を同じ紙面へ置いた。

後に誌名はTAPへ変わった。

TAPの展開形にはTechnological American PartyTechnical Assistance Programなど複数の表現が残る。

名前が揺れていること自体、この媒体が政党機関紙、技術支援誌、地下文化の回覧文書のあいだを移動していたことを示す。

YIPL / TAPは、電話の穴を紹介しただけではない。通信技術を、支配と抵抗の問題として紙面へ載せた。

長距離電話へのアクセスは、政治活動の基盤だった

1970年代初頭、長距離電話は高価だった。

金、固定住所、組織力を持たない運動にとって、遠隔地と連絡する能力は当然のものではない。

Bruce Sterlingの記述では、YIPLはphone serviceの利用法や「rip-off」技術を集め、Yippieの活動家が長距離電話へアクセスするための情報源になった。

政治的メッセージ
                ↓
        遠くへ伝えたい
                ↓
        通信費が必要
                ↓
        電話会社が入口を管理する
                ↓
        技術知識でその境界を越える

ここでは無料通話が単なる節約ではなく、通信権、企業支配、反体制運動の実務と結び付いていた。

ただし、政治的目的があれば無断利用が自動的に正当化されるわけではない。

YIPL / TAPが面白いのは、違法性を消すことではなく、技術的越権へ政治的意味を与えた点にある。

Party Lineという名前

party lineは、複数加入者が一本の電話回線を共有する方式を指す。

同時に、政党や組織の公式見解という意味も持つ。

Youth International Party Lineは、その二重性を利用した名前だった。

電話のparty line
        = 同じ回線を共有する
        
        政治のparty line
        = 同じ立場や方針を共有する

通信と政治が、題名の中ですでに接続されている。

技術記事と地下新聞のあいだ

YIPL / TAPには、電話、phreaking、通信料金、機器、企業、警察、反体制運動などに関する情報が混在した。

それは学術誌でも、純粋な回路雑誌でも、普通の政治新聞でもなかった。

  • 実用的な技術メモ
  • 電話会社への批判
  • 読者からの情報
  • 他文書の転載
  • 事件や摘発の情報
  • 風刺、煽動、誇張
  • 危険度の高い資料

が同じ紙面に入った。

技術情報は、回路図だけで政治的になるのではない。誰へ渡され、何を可能にするかによって政治的になる。

YIPLからTAPへ

YIPLは1971年6月に始まり、1973年前後にTAPへ移行したとされる。

Yippie運動の色が薄れ、より広い技術地下文化の媒体へ変化した。

YIPL
        カウンターカルチャーと電話利用
                ↓
        TAP
        phreaking、技術情報、地下文化の継続的媒体

この移行は、政治運動が終わって技術だけが残った、という単純な話ではない。

反企業、情報共有、通信へのアクセス、中央集権への不信といった感覚は、後のhacker文化へ形を変えて残った。

FBIファイルに残った媒体

The History of Phone Phreakingは、YIPL / TAPに関するFBI New York Field Officeのファイルを公開している。

そこには、ニュースレターの所在、発行者、内容、捜査上の関心が記録されている。

地下新聞が自分をどう語ったかだけでなく、国家機関がそれをどう分類し、何を危険と見なしたかも残る。

媒体自身の言葉
                と
        捜査機関の記録

は一致しない。

FBI文書は客観的な最終説明ではなく、監視する側の視点を持つ一次資料である。

それでも、発行時期、別名、住所、捜査対象となった理由を追う手掛かりになる。

「情報提供」と「再武装」の境界

YIPL / TAPの保存は重要である。

それはphone phreaking、カウンターカルチャー、技術出版、監視の歴史を示す。

一方、掲載物の中には、現在も危害へ転用し得る題材や、当時から危険だった資料が含まれる可能性がある。

当サイトでは、表紙、誌名、目次、編集方針、流通、政治的文脈を収蔵する。

現行システムへ適用できる侵入手順、武器・爆発物の製造情報、個人情報は再掲しない。

地下出版物を歴史化することと、掲載された手順をもう一度実用化することは同じではない。

Phrack、2600 Magazineへの前史

YIPL / TAPは、後のPhrackや2600 Magazineと同一ではない。

しかし、次の形式を早くから持っていた。

  • 正規出版の外側で技術情報を継続発行する
  • 読者共同体から情報を集める
  • 企業や国家が隠す内部構造を記録する
  • 技術知識と文化的態度を同時に配る
  • コピーされることを前提に流通する
YIPL / TAP
              ↓
        地下技術ニュースレター
              ↓
        電子雑誌・BBS文書
              ↓
        Phrack / 2600 / textfile文化

一本の直系系譜ではないが、同じ生態系の前層として置ける。

この標本が示すもの

  • 通信インフラへのアクセスは、政治運動の可能性を左右する
  • 技術文書は、配布先と目的によって政治的実践になる
  • 地下媒体は、技術、噂、思想、危険情報を同じ紙面へ載せる
  • 国家の捜査記録も、地下文化の保存経路になり得る
  • 媒体名の変化は、共同体の重心移動を示す
  • 情報の民主化と無断利用は重なるが、同一ではない
YIPL / TAPは、電話会社の内部を読む新聞であると同時に、電話会社が社会の通信を握ることへ異議を唱えた新聞だった。

関連標本

資料・出典